フランス博士留学記

クロワッサンうますぎるだろ。そしてクロワッサンという発音は100%伝わらないと思う。

フランスだと博士学生は給料もらえちゃう話。

Bonjour tout le monde.

こんにちは。

 

今日はお金の話をしたいとおもいます。

 

そうです、フランス博士学生は給料をもらえるんです。

 

そもそも博士学生って?

念のためいま一度説明。

日本の大学以降の教育課程は

学士課程4年、修士課程2年、博士課程3年

となります。

浪人・留年なしでも博士卒業時は28歳になります。ただし、理系では4,5年になる人もいますし、文系では6年とかの人も珍しくなく、30歳を超えることもザラです。

博士の主な作業は勉強というより研究ですね。研究者になるための修行です。

ちなみに僕は修士課程まで日本で学び、フランスの博士課程に入学しました。

今回は博士学生の経済事情を中心に、両国の博士課程への認識の違い、就職面にも言及して比較して話を進めていきます。

 

日本の博士課程

・経済面

日本の博士過程の場合、学振という資金を獲得できれば2,3年間の授業料を肩代わりしてもらえる上、確か月20万くらいもらえます。ただ、これを獲得できるのは博士学生全体の約30%だけです(詳しい話:D1,D2合計するともう少し高いかも)。

よって上記の学振を獲得できなかった人は、授業料・生活費をバイトや親からの仕送りでなんとかしなくてはなりません。先生の研究を手伝うことで授業料を免除してくれる仕組みを持っている大学もありますが、それでも生活費は払われませんし、もちろん給料はありません。

 

・世間の見方

みんなからはこんなことをよく言われます。

「勉強好きなんだね」(←ただの勉強ではありません、一応研究です。)

「いつまで親の脛かじってるの?いつ働くの?」(←自分の研究以外にも後輩の面倒見たり先生の下請けしたり激務です。)

「え、博士って何?」(←もういいです。)

 

・就職

実は大学の先生になれる人はそんなに多く居ません(詳しくは下記リンクを)。特に教授になるのはプロスポーツ選手並みの倍率とか。となると、民間に就職するしかないですが、高い専門スキルより汎用的な潜在能力を重視する雇用文化の犠牲になります。特定分野に専門性のある博士取得者より、社内で大卒を育てる方が日本の人事システムには合っています。つぶしがきく工学系はまだマシですが、博士なんぞ採用しないと言われることは稀ではありません。

従って、現状では「経済的リスク、就職リスク、社会の無理解」を克服した、あるいはそれがどうでもよくなるほど研究が好き、という人が博士課程に進む状況となっています。

 

matome.naver.jp

 

フランスの博士課程

・経済面

理系ではおそらくほぼ全員の博士学生が日本の修士卒社会人と同じくらいの給料をもらって研究しています。その分先生の手伝いをしろ、とかもありません。ただ自分の研究を進めるだけ。しかも一応学生扱いであるため、フランスの誇る手厚い若年層への各種割引・免除制度の恩恵を受けることができます。その代わりクビになる可能性はあります。僕もブログ作成をせっせと終えて作業に取り掛からないといけません。

 

・世間の見方

実はフランスでもやはり修士後に就職してしまう人が多く、それほど人気の進路ではありませんが、博士課程自体の認知度は高く、僕自身、大学生以上のフランス人に「私は博士学生です」と自己紹介して通じなかったことはありません。

また、名前を書く際、Monsieur( ムシュ=Mr.), Madame(マダム=Ms.)の他にDr.(博士)を選べる場合もあります。Dr.◯◯と呼んでくれ、という人もいますし、Dr.で呼ばないと失礼にあたるケースもあります。また、ビジネスで専門性が重視される現場では博士号がないと発言権すらない、という話もよく聞きます。日本では◯◯博士って呼ぶことはほとんどないですよね。

 

・就職

日本に比べ企業に就職するケースが多い印象です。就職に困った人はいまのところ見たことがありません。ただ大学の先生とか、国の研究所に行きたい場合はそれほど日本と変わらない倍率なのではないでしょうか。

 

終わりに

僕の知る限り、先進国で博士課程に給料が出ないのは日本くらいではないかと思います。 ノーベル賞で大騒ぎする割には、研究者の登竜門である博士課程に対して社会の理解が低く、その存在を認知されているかさえ怪しい気がします。

欧米に留学というと、優秀という印象があるかもしれませんが、フランスの博士学生が日本に比べて特段優秀であるとは思いません。むしろ日本の博士の方がフランスの何倍も激務をこなし、高いリスクの中で死ぬ気で戦っていると思います。

僕よりはるかに優秀な方々が、日本ではバイトやもはや借金と大差ない奨学金を借りながら博士研究をしています。

こうした現状が変わることを心から祈るとともに、日本でお世話になった博士学生の方々、そうした課程を生き抜いた先生方には深い敬意を表したいと思います。

 

それでは。

A bientôt!

 

参考

この件に関してより細かくまとめていらっしゃる方がいます。

非常に厳しい意見ですが、当たっていると思います。

bulk.co.jp